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微妙なお年頃
第1章 中年女子の浮気事情


 駅前で拓哉と別れ、一人電車に揺られた。
振動が体に伝わるたびに、体の中に残る彼の感覚が思い出される。
・・まだまだ私、オンナ、なのね・・
ドアのガラスに映る自分の顔に目を凝らす。
なんてきれいなんだろう、こんな表情今までみたことない。自分でも・・驚いちゃう・・
 彼のことを考えると瞳が輝く。口角が上がる。恋?まさか。
でも、それに似ているのは確かだと思う。
だって、すべてをさらけ出しているんだもの、彼の前で・・
この歳じゃあ、あり得ないでしょう?普通は。
長年連れ添った夫に同じように老いた体をみせあったところで感じたりなんかしない。
とろけるような甘味なんて、味わえない。

 夫とはもう…3年、していない。このまま・・もう・・そう覚悟もしている。
いや求めて見ればいいんじゃないか、そう心を奮い立たせようとも考えたりするけど、
手が…動かない。ベッドの中で夫の体を引き寄せればいいじゃない。
頭でわかっていても…体が動かない。夫のほうだって、私に手を伸ばしてこない。
ダブルベッドの中でちょっとでも体が触れようものなら逆方向に寝返りを打つ。
なによ!
私も彼に背を向けて眠る。夫婦ってもう…男と女には戻れないのかしら・・・


 電車の振動はさらにコズエの体を刺激する。
とろりとした甘酸っぱさに思わず腿を擦りあわせる。
今私は恥ずかしいほどオンナの痕跡に身をよじっている。
だけどまわりの人に気付かれることなんて、まずあり得ないんでしょうね、と
ガラスに映る自分に微笑んだ。




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