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揺れる世界の秘め事
第5章 最寄り駅、帰宅。
「せんぱい?…おーい……麻美さんー?」

ペチペチと頬を叩かれ、
まどろみのなかから引きずり起こされる。

「…ぅ…さい……名前…誰よ…」
いい気分だったんだから…このまま…

そう言おうとして、
また頭にモヤがかかりかけてるとき。

「寝起きは機嫌悪いんだー?麻美さんって」
そう言いながら男は頭を撫でてきた。


この…声…どこかで……

…………

「…はっ!?」
「へ?」

きょとんとした有馬君の声が聞こえ、
頭が真っ白になる。

「え、ここ、どこ…?」
必死に出した言葉に有馬くんが笑う。

「電車の中ですよ。そろそろ降りる駅。
麻美さん席座って熟睡しちゃってたんですよ」
「へ、あ…ん…んんー…そうなの?」

眠る前に椅子に座った記憶がなく、
むしろいつ眠ってしまったかすら記憶がない。

たしか最後の記憶では…痴漢に……
顔が一気に赤くなるのを誤魔化すように首を振ると、
目の前の有馬君が首をかしげる。

「そうなの?…と、いわれても俺よくわからないですが…
端のほうまで人波で追いやられちゃってましたし」
「そ、そっか、端の方まで…か…」

周りからの視線が気になってあたりを見回したときには有馬君は確かに見当たらなかった。

たぶん見られてない…よね?

「そういえば先輩ちらりと見たとき体調悪そうでしたが大丈夫ですか?」
「え!?…いや、大丈夫だよ?
…ちょっと人に酔っちゃってたの、
少し眠って良くなったから」

ビクリ!!とあからさまに反応してしまった、
変に思われていないだろうか……?
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