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揺れる世界の秘め事
第19章 揺れる世界の秘め事
「…のに、なんで遅刻しそうなのよ!?」
「いや、あんまりにも抱き心地よくって…全然起きれなかったっす」

電車から降りてダッシュで自宅へ帰り、鞄を取り。
そのままダッシュで駅へ戻りながら純平くんに八つ当たりをしてしまう。

私だって一度予定してた時間より早めに起きた。

でも純平くんの腕の中が心地よくて、つい意識を手放してしまったのは事実。

で、次起きたのは自分が行動する時間のちょっと前…だったんだけど、純平くんが全く起きてくれなかった。
つい、寝顔が可愛くて、無理やり起こせなかった私も悪いんだけど、ね。

「はぁぁ…これじゃぁ、仕事前の日はお泊り無理ね…」

密かに次のお休みは私の家誘おう…とか思ってたりしたんだけどなぁ…ざんねん。

「え、やだ。する。ぜってぇ今度は起きるし。がんばるし!!」

私の提案を全力で却下した純平くんは、昨日の淡い、儚い雰囲気はもうどこかへ退場して、いつも通りになっていた。

「んー…そうね、私も頑張って起きるわね…うん」

純平くんのせいにしてもしかたないもの。
だいたいいつもの時間よりちょっと遅いだけで、出勤時間にはまだ余裕がある。
この調子なら、電車が止まったりしなければ、余裕で間に合うな…なんて思っていたら、
目の前にいた純平くんの手のひらがモゾモゾと動き出す。


「…っ……っん?…純平くん…?この手は?」
「え?どうかしましたか?センパイ??」

慌てて小さな声で問いかけると、ケロッとした顔で逆に問いかけられた。
あ、悪魔…!

「なんで、手…ちょっとぉ…」
「んな事言ったって…朝から麻美さんが目の前にいたし…さっき走ったせいですげぇ麻美さん色っぽいし…しかたなくね?」
「は…はぁ?」
「あー…でもヤバい。今までみたいに触るだけで足りるかな俺…」
「~~~!!ばかっ!」

わけのわからない、とんでもない理屈だけど…

彼との始まりは、電車の中だった。
きっかけはもっと前。
私に一目惚れ…したからって、同じ会社にまで就職した、私の大好きな人。
獣のように飢えている後輩の彼、
電車での『あの人』である純平くん、


そんな彼と、恋愛関係でいるのは。

私達だけの、
揺れる世界の秘め事…。


END

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