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昼想夜夢~君、想ふ~
第10章 乱反射
彩花の部屋に入ったのはこれで二度目。
一度目は彩花の様子を心配して、北条の変わりに見舞いに来た。
でも、今はあの時とは訳が違う。
あの時は半ば強引に中へ上がり込んだが、今は…。
「はい、コーヒー」
「あぁ、ありがとう」
花束をテーブルに置き、彩花は俺のために温かいコーヒーを淹れてくれた。
ふわりと香るコーヒーの香りを嗅ぐと、緊張していた気持ちが幾分か落ち着いた。
目の前のテーブルには、俺が渡した薔薇の花束と俺のぶんのコーヒー。
「彩花は飲まないのか?」
「私はさっき飲んだから」
「そうか…」
今は、彩花自ら俺を招き入れた。
その事実が俺に妙な緊張をもたらしている。
彩花が淹れてくれたコーヒーを飲み更に気持ちを落ち着かせようとした。
冷えた体に温かなコーヒーが染み渡って体が暖まる。
「何で…、私の誕生日を知ってたの…?」
「え…?」
俺の90度横に座った彩花が、目を反らしながら俺に聞いてきた。
「誕生日…、今日だって…」
「あ、それは…」
確かに何日か前に北条に相談されたんだよな。
彩花の誕生日プレゼントは何が言いかと。
「まー君が言ったの?」
「あぁ、まぁな…」
「…そ、そう」
小さな声で、まだ俺を警戒するかのように言葉を選びながら俺に質問を投げ掛けて来る。
俺を招き入れてしまったことを後悔してるのだろうか?
「じゃあ、今日の喧嘩の事もまー君から聞いたの?」
「あ、あぁ。ちょっとした成り行きで」
成り行き…、なんて言葉を選んだが、本当は北条との会話を盗み聞きしてたなんて口が裂けても言えねぇな。
今日、このタイミングに北条がここに来れない事なんて、北条本人の口からじゃないと知り得ない事だ。