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昼想夜夢~君、想ふ~
第10章 乱反射
「ほ、北条も悪気があった訳じゃねぇと思うが…」

この期に及んで、俺は北条の肩を持とうとしている。
彩花の気持ちを考えれば、こんな台詞は言うべきじゃない。
何で敵に塩を送るような事を言わなくてはならないのか。

でも、彩花は北条の事が好きなんだがら、俺が北条を悪く言う訳にはいかない。
彩花が北条の気持ちを信じたいと思ってるなら、俺はそれを応援するような事しか言えない。

「別に…。今日会えない事ぐらいわかってたから…」
「え?」
「今、いろいろと忙しい時期だって聞いてるし、無理して会いに来なくてもいいって言ったのは私だから…」

あぁ、北条もそう言ってたな。
北条の仕事の事を思って、今日が誕生日当日でも、彩花は身を引いたんだよな。

「あぁ。北条から聞いたよ…」
「だから、別に…。こんな、風に…、心配しなくても…」




―――――っ。






その時、俺の脳裏に大昔の記憶が甦った。
それは、彩花と初めてあったあの雨の日の記憶。
耳をすませば、あの時の雨音まで聞こえてきそうなぐらいに鮮明に甦った。

彩花は、いつもこうやって我慢して来た。
あの雨の日だって、寒さに耐えながら母親が迎えに来てくれるのを待っていた。
いくら俺が兄変わりになって遊んでいたとは言え、母親がそばにいない寂しさにいつも耐えていた。

いつもそうやって無理に笑っていたな。

今もそうやって強がって、寂しくない振りをしている。
俺はそんな彩花を見て何とかしてやりたいと思ったんだ。

あの頃と同じように、少しでも彩花の寂しさを紛らわしてやりたいと思ったんだ。


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