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昼想夜夢~君、想ふ~
第1章 過去と思い出
【昼想夜夢】
昼に考えていたことが、夜になって夢になること。または、いつも思い続けていることを言い表す言葉。
―――「小川さんっ!!」
昼休み、会社の屋上で一服する俺の元へやって来たのは後輩の北条雅志。
「何だよ?食後の一服中に」
「俺も一服しようと思って♪」
そう言って、北条は胸ポケットから電子タバコを取り出した。
あー、こいつは電子タバコなのか。
屋上の手すりにもたれながら一服中。
北条は電子タバコだが、俺は相変わらず紙タバコ。
「小川さんはまだ紙タバコなんですね」
「…まぁな」
昔はどんな会社でも、社内に喫煙スペースがあったのに、昨今の禁煙ブームのお陰で社内は終日禁煙。
俺達喫煙者はこんな屋上にまで追いやられた。
さすがに昼休みに屋上に来るやつもいないだろうと思い、昼飯の後はここで一服するのが日課になっている。
ここは俺だけの憩いの場所なのに、誰に聞いたのかどう嗅ぎ付けたのか、最近では北条まで一緒になって一服する始末。
俺は一人でのんびり一服したいのに。
「小川さんの午後の日程は?」
「お得意先への営業回りだ」
こいつ、北条雅志は俺の直属の部下。
怖いもの知らずのゆとり世代で、先輩である俺にまで友達感覚で馴れ馴れしい。
が、この馴れ馴れしさを注意しようにも、最近の若者の豆腐メンタルに傷をつけるわけにはいかない。
傷をつけたら最後、パワハラだモラハラだと騒ぎ立てられあっと言う間に俺達が解雇されてしまう。
今はそういう時代だ。