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昼想夜夢~君、想ふ~
第14章 昼想夜夢
彩花に出会ったのは、彩花がずっと幼い頃。
あの時、彩花の手を取った瞬間から、俺の運命はとっくに決まっていたのかも知れない。
トイレから部署に戻ると、そこはまるで戦場そのものだ。
引っ切り無しになる電話に飛び交う怒号。
社員全員がタブレットと睨み合い、スマホを片手にあたふたと忙しそうに飛び回っている。
俺も自分の仕事に着こうとデスクに戻った。
始業開始から大幅の遅刻。
だが、あまりの忙しさに誰も俺を咎める者などいない。
そんな時間すら惜しいほどに忙しいのだろう。
デスクに座りタブレットを開き、外回りの段取りや発注確認に目を通した。
このままじゃ残業確定だなと言わんばかりの業務数だ。
溜め息を付きながら仕事に就いた。
「………」
仕事をしながらも、俺は北条が気になって仕方なかった。
俺のデスクの後ろには北条がいる。
正直今は、振り返って北条の心配をする時間すらないほどに忙しい。
が、背中越しでも何と無く漏れ伝わって来る。
北条が傷ついてるという雰囲気がこちらまで漂って来るようだった。
「はい、はい、かしこまりました。では、そのように伝えて置きますので。えぇ、はい」
背後から聞こえてくる北条の声。
どうやら取引先との電話らしいな。
声だけ聞くといつもと何も変わらない感じだが。
彩花は何も言わなかったが、プロポーズを断ったのは少なからず俺のせいでもあるだろう。
俺に抱かれてから、北条とも余所余所しくなってしまったようだし…
そこまでバカ正直な彩花の事だ。
俺との関係を気にして断ってしまった、という可能性も大いにある。
もし、北条がそれを知ったらどうなるだろう。
それでも彩花を想い続けるか?
それとも、そんな隙だらけの女は願い下げだと、彩花を振るのか?