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第15章 君、想ふ

ゆっくりと、気怠そうに振り返ると、そこにいたのは予想通りの人物。




「あぁ、北条か…」
「どうして、小川さんが彩花のマンションに？」




信じられない、が
どこかで確信を持っていたかのような、そんな複雑な表情をした北条がそこに立っていた。





「お前こそ、何でここに？」

何で北条がここにいる？
なんて、そんな野暮な事は聞くつもりはない。
会社を飛び出した俺を見て心配して後を尾けて来たのだろう。

もしかしたら、心配ではなく、確信していたのかも知れないな。

「小川さんがいきなり会社を飛び出すから…、心配になって…」
「ふーん。それだけか？」
「………っ！」

俺のその台詞に北条の顔がカッと赤くなった。
この状況で北条を挑発するような言葉を吐く俺も相当な悪者だ。
でも、彩花がいない今、北条にどう思われようがどうでもいい。

必死に隠そうとしていた秘密だったのに。
墓場まで持って行こうと思っていたのに。

「…ず、ずっと怪しいと思ってたんですよ。小川さんと再会してから…、彩花の様子が変わって行ったから…」
「…あぁ」
「最初は…、懐かしいからだとか、久々の再会で喜んでるからだとか思ってましたけど…」
「へぇ」
「小川さんは、俺の尊敬する先輩だし…。そんな事ないって思ってました…」

拳を握り締めわなわなと震える北条。
俺が北条の立場なら、俺のような存在は邪魔なだけ。
俺ならこの場で殴り殺してしまうだろうな。