この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
昼想夜夢~君、想ふ~
第3章 戸惑い
―――バタンッ、バタッ、バタ…
玄関のドアを勢いよく開閉した音、廊下を走り去る音が聞こえた。
こんな事をした男のそばからいち早く逃げたいのだろう。
「大嫌い、か…」
さっきまで彩花が寝ていたソファー。
「………」
黒のレザーに付着する愛液と小量の血液。
あー、いきなり挿入したからな。
痛い痛いって騒いでたけど、出血させちまったのか。
俺はもう、彩花のお兄ちゃんに戻れなくなってしまった。
いや、もう戻りたくもなかった。
「彩花…」
俺は自分の手で壊してしまったのだ。
あの遠い日の思い出を。
あの、何よりも愛しく優しい日の思い出を、ここ手で粉々にしてしまったのだ。
そう思ってるのは彩花とて同じことだ。
なのに、俺は微塵の後悔も感じていなかった。
何より、さっきまで彩花がここにいた、その事実の方が嬉しかった。
あの日、女の顔をして現れた彩花。
今思えば、俺はあの日から壊れてしまっていたのかも知れない。
女の顔をしたお前と再会した瞬間から、全ての歯車が狂いだしたのかも知れない。