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昼想夜夢~君、想ふ~
第3章 戸惑い

―――バタンッ、バタッ、バタ…

玄関のドアを勢いよく開閉した音、廊下を走り去る音が聞こえた。
こんな事をした男のそばからいち早く逃げたいのだろう。


「大嫌い、か…」

さっきまで彩花が寝ていたソファー。

「………」

黒のレザーに付着する愛液と小量の血液。
あー、いきなり挿入したからな。
痛い痛いって騒いでたけど、出血させちまったのか。



俺はもう、彩花のお兄ちゃんに戻れなくなってしまった。
いや、もう戻りたくもなかった。

「彩花…」

俺は自分の手で壊してしまったのだ。
あの遠い日の思い出を。

あの、何よりも愛しく優しい日の思い出を、ここ手で粉々にしてしまったのだ。
そう思ってるのは彩花とて同じことだ。

なのに、俺は微塵の後悔も感じていなかった。
何より、さっきまで彩花がここにいた、その事実の方が嬉しかった。



あの日、女の顔をして現れた彩花。
今思えば、俺はあの日から壊れてしまっていたのかも知れない。

女の顔をしたお前と再会した瞬間から、全ての歯車が狂いだしたのかも知れない。






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