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昼想夜夢~君、想ふ~
第4章 君に触れる
彩花の泣き顔は見たくない。
彩花の泣き声なんてもっと聞きたくない。
俺は一目散に廊下を抜けると部屋を飛び出した。
――――バタンッ!!
しんっと静まり帰るマンションの通路。
ひんやりと冷たい風が汗をかいた体に触れ、俺の体温を奪って行くようだった。
と、同時に、俺の頭の熱も冷めていく。
「――――くそっ…」
ドアに背中を預けて…、思い出すのは彩花の事ばかり。
幼かった彩花の笑顔、俺を呼ぶ甘えた声。
再会した彩花は大人になっていた。
誰から見ても美しく魅力的な女性に成長していた。
それは、俺の欲目とかではないはずだ。
だが、彩花は二度と俺に微笑みかけて等くれないだろう。
誰よりも、彩花には幸せになって欲しいと願っていたのに。
「―――――っ!」
俺は一体何がしたいんだ…?
彩花を泣かせ、傷つけてしまった。
ただ、彩花に兄として見られるのが嫌だった。
だから彩花を傷つけた。
もっとも最悪なやり方で…。
季節はもうすぐ冬。
薄手のジャケットを着ていても、体に感じる風は冷たい。
なのに、先程彩花を抱いた体の熱がまだ冷めない。