この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
昼想夜夢~君、想ふ~
第5章 BIRTH DAY
彩花は昔から甘えん坊だった。
いつもいつも俺の後を付いてくる、そんな可愛い子供だった。
『お兄ちゃん!』
『純お兄ちゃんっ!』
彩花の小さな手が俺に触れる度に、俺は幸せだった。
この小さな手の女の子の幸せを本気で願ったはずなのに。
『あんたなんか大嫌いっ!!』
――――――はっ!?
な、何だ今のは…。
突然、彩花に言われた台詞が頭の中でフラッシュバックした。
「どうしたんスか?小川さん」
「ほ、北条…」
彩花の声がフラッシュバックしたかと思えば、今度はいきなり目の前に北条の顔が現れた。
気づくとそこは、いつもの会社。
いつもの部署で、ここはいつもの俺のデスク。
「珍しいッスね。小川さんがうたた寝なんて」
「う、うたた寝…?」
あー、そうだ。
俺は出社してすぐにデスクについたが、頬杖を付いた瞬間についうたた寝をしてしまったのだ。
幸い業務が始まる前で部長も来ていない。
今のフラッシュバックは夢か…。
「寝不足ッスか?」
「あぁ、まぁな…」
俺の顔を覗き込みながら俺の心配をしてくれている。
昨夜は眠れなかった。
強引に彩花を抱き、家に帰った俺はシャワーを浴び、ベッドに横になったがどうにも寝付けなかった。
昨夜、彩花に言われた台詞が頭の中にこびりついて離れない。
何度も何度も寝返りを打ってるうちに朝を迎えてしまった。
俺の頭の中で、幾度となく繰り返されるあの台詞。
『あんたなんか大嫌い』と。
「あ、昨日はありがとうございました」
「ん?何がだ?」
「いや、彩花の家に見舞いに行ってくれたでしょ?」
俺はその言葉で現実に戻り切れた。
あぁ、そうだ。
あの後、彩花は大丈夫だっただろうか?
だいぶ無理をさせたが、今日はちゃんと仕事に行けただろうか。