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アブノーマルごっこ
第5章 先生とキャンディ
「もぉ…やだ…」
ポロポロと涙が溢れると先生がポケットからハンカチを出してくれた。柔らかくて使い込んでる優しい感触。洗濯物のいい匂いがする。
先生が立ち上がったところに飛び込む。
「ちょっ…おいっ」
「好きなんだもん」
先生は、ただ頭をポンポンするだけで、抱きしめてはくれなかった。
初めての先生の胸の中…
しばらくそのままでいると、昼休みの終わる予鈴が聞こえてきた。廊下を走って通りすぎる足音が聞こえてきて、現実に引き戻される。
「もうあんなことするなよ」
私は先生から体を離して、キッと睨みつけた。
「ほんと、もうやだ!ばかっ!」
「神崎ー、ちゃんとしょんぼりして帰れよ。」
私の背中に向かって、呑気にそんなこと言ってる。
いつかちゃんとこっちを向かせたい。指導室の戸を思いっきりバタンって閉めてやった。
放課後、部活が終わって帰ろうとしたら、指導室に先生が入ってくのが見えた。
また先生と二人だけになれる!…と思って、ノックもしないで指導室のドアをそっと開けて入った。
部屋の奥の方で誰かと電話で話してる。女の人っぽい声が漏れ聞こえてくる。
「悪かったよ、でももう無理なんだって。」
「無茶言うなよ。」
「だからさ…そういう話じゃないだろ?」
ケンカしてる…のかな?
私は先生の椅子に座った。古い椅子だから、座るだけでキィーって音がする。
「ちょっとまって、かけ直す」
びっくりした顔の先生がこっちに出てきた。