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第8章 陽子の正式な出勤日

「あ、楽しかったです。もう帰りますので。」

「え、そうなんですね。またのご来店をお待ちしております。」と店長は見送った。

何かトラブルでも起きたのかと思い店長は急いであみの接客したテーブルに向かう。

そこにはひとり泣き崩れるあみがいた。

泣きながらあみは「こうちゃん、こうちゃん、私は今でも大好きだよ。」と呟いていた。

事情は良く分からなかったが何かを察した店長が自分のハンカチをみくに渡す。

「あみさん、その涙は悲しみの涙では無いんですね。」

「て、店長。私、昔付き合ってた人が・・・まだ・・・私のことを・・・」泣き崩れている為言っていることはあまりよく分からなかったが、店長も昔は売れっ子ホストだったので空気でだいたいの状況は分かった。

「あみさん、幸せになってください。」と店長は言ってロッカールームに運んでいく。

この言葉に店長の思い全てが詰め込まれている。

いい男は女性にいちいちだらだらと質問をしないのだ。




実は、その後あみは幸一郎とまた付き合い始めて後々結婚することになる。

幸一郎は報道陣を集めて結婚報告する際に、妻は一般女性ということで自分で書いた似顔絵を見せて「最高の女性なんです。」と言った。

出会いのきっかけについては、「僕らの出会いはある大型書店に行った際に同じ本を選ぶタイミングで手が当たりそこから恋が始まった。」と言っている。

その会見をテレビで見ていた後輩の田島は「嘘つけ！そんなドラマみたいな出会いがあるか！」とツッコミながら「良かった・・・本当に良かった・・・」と泣いていた。