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~菊タブー~ お妃候補はドレサージュに陶酔し…
第6章 新たな罠、…黒幕は意外なところに
飯倉にある米国公館では交渉が始まるや、郁子はピンチに陥った。のちに彼女のブリーフィング不足、で片のつけられる問題だが、実態は少々異なる。
「ど、どいういうことなの、これは…?」
郁子が狼狽したのも無理はない。米国の交渉役である相手方に配布されるはずの、資料がすべて書き換えられていたのだ。米国側から提示のあった日本側の輸入障壁、政府補助、流通システムの問題に対する陳情等、すべての回答は抹消されていたのだ。そればかりか、代わりに、日本の立場や外務省の意向、そしていずれ開催される首脳会談での我が国の首相が持ち寄るであろう『半導体協定』の内部文章が記されたものが、配布されてしまったのだ。

(そういうことなのね)
男女雇用機会均等法第一世代として、男性優位の社会を肌で感じていた郁子には、この卑劣な罠の首謀者はすぐに分かった。同期で、郁子の傍らに鎮座ます、高田健一郎だ。
(男の嫉妬は怖いわ…)
郁子の予測は的中しており、この資料の改ざんはすべて同期の聡明な女性職員の後塵を拝することに屈辱を覚える彼の手で行われたものだ。ともあれ、日本側は手の内を知られる羽目となり、郁子は交渉責任者として針の筵に座らされた格好だ。


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