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~菊タブー~ お妃候補はドレサージュに陶酔し…
第8章 為政者たちによる危険な罠 日米合同皇太子妃拷問絵巻 日本篇
―――黄昏時の永田町のとある料亭。東京のど真ん中にあって広大な敷地を持ち、その喧騒から隔絶されたような静寂の中、鹿威しがカコンと高い音を鳴らす。
「それで…」
と、黒縁メガネの下で山辺恒夫外務大臣は底昏い声で切り出す。

「米国も例の娘…小越郁子といったかな。次の国連大使…といわれる小越典泰のお嬢さん…彼女には手を焼いた様子だね」
「はあ、同期の職員を使い、小越を罠に嵌めましてね…。失態を演じさせ、先方の交渉役から恩を売られた格好になったんですが…たとえ、日米の交渉に亀裂を入れたとしても、帝の子息との婚姻はご遠慮いたしますの一点張りだったようで」
「ふん、ますます小癪な娘だね。しかしまぁ、米国の力を借りて皇太子妃候補をオトしたとあれば対面も悪いし、何よりも菊のカーテンの内幕をアメリカさんに打ち明けたことになる。不幸中の幸いといったところだが…それにしても、あの極度のサド大使の折檻に耐え忍んだだけでも、今時珍しい堪え性のある女といえるな、小越郁子は…」
声音を変えると、この国の外交を司る『偽政者』は舌なめずりをする。

「いいのだね? 私流の『説得』を試みても」
「はい、宮内庁を通じ、『千代田』からも許しが出ております」
千代田とは、現帝の意、だ。
「『万一』の際でも、後始末はご心配なく、とのことです」
万一、とはこの政治家も米国の変質者と変わらず逸脱した性癖の持ち主であり、彼が己の性癖をもってお妃候補を『説得』し、失敗した際にも、その真相を闇に葬るという意味が込められていた。そして、このおぞましい提言を顔色一つ変えず、肯定するのは郁子の上司安西武彦審議官であった―――。
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