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白タクドライバー
第1章 帰路
もうクタクタで歩けない、荷物も重くて、誰か助けて……。
キャリーバッグには売れ残った商品が山ほどある。
明日のご飯代も苦しいというのに、終電も逃して歩いて帰るしかない。
靴擦れの足と伝線したストッキング。
あまりの疲労感に、ふとタクシー乗り場に目をやったが、あぁ自分はお金がないんだったと思い出した。
呆然と立ち尽くしていたら、タクシー乗り場の近くに止まっていた白いセダンの窓が開き、男がこちらに向かって呼びかけているのに気がついた。
「どちらにお帰りですか?」
「いえ、お金がないので……」
「お代は結構ですよ」
その言葉に、少し遠退いていた意識が蘇った気がした。
タダなのか……⁉︎
男をじっくり見る。
白いシャツの青年は、微笑んだ。
「大丈夫です。安全運転でお送りします」
では乗せてもらおうか……と思ったが、ふと不安がよぎった。
しかし、男を再度じっくり見ている間もなく、彼は車から降りトランクを開けた。
「お荷物お預かりしますね」
親切な口調で、キャリーバッグを詰め込むと、後部座席のドアを開けた。
「どうぞ」
考える間もなく促されるように、車に乗り込んでしまった。
「安心して下さい」
運転席に座ってシートベルトを締めながら男は言った。
「わたくし、運転士の白井と申します。どちらまでお送りしましょう?」
「西町3丁目なんですけど……」
「了解しました。近くまできたら御指示お願いしますね」
軽やかな口調で男はしゃべる。
「随分お疲れのご様子ですね。荷物重かったですもんね」
「はい、あの、本当にタダで大丈夫なんですか?」
「もちろんですよ。ボランティアでタクシーやってるんです」
男は爽やかに答えた。
自分も少し安心した気分になり、車の揺れで眠気が襲ってきた。
ウトウトとしていると、
「寝てて大丈夫ですよ。近くまできたらお声かけます」
そんな言葉が聞こえたのを最後に、意識を失った。
キャリーバッグには売れ残った商品が山ほどある。
明日のご飯代も苦しいというのに、終電も逃して歩いて帰るしかない。
靴擦れの足と伝線したストッキング。
あまりの疲労感に、ふとタクシー乗り場に目をやったが、あぁ自分はお金がないんだったと思い出した。
呆然と立ち尽くしていたら、タクシー乗り場の近くに止まっていた白いセダンの窓が開き、男がこちらに向かって呼びかけているのに気がついた。
「どちらにお帰りですか?」
「いえ、お金がないので……」
「お代は結構ですよ」
その言葉に、少し遠退いていた意識が蘇った気がした。
タダなのか……⁉︎
男をじっくり見る。
白いシャツの青年は、微笑んだ。
「大丈夫です。安全運転でお送りします」
では乗せてもらおうか……と思ったが、ふと不安がよぎった。
しかし、男を再度じっくり見ている間もなく、彼は車から降りトランクを開けた。
「お荷物お預かりしますね」
親切な口調で、キャリーバッグを詰め込むと、後部座席のドアを開けた。
「どうぞ」
考える間もなく促されるように、車に乗り込んでしまった。
「安心して下さい」
運転席に座ってシートベルトを締めながら男は言った。
「わたくし、運転士の白井と申します。どちらまでお送りしましょう?」
「西町3丁目なんですけど……」
「了解しました。近くまできたら御指示お願いしますね」
軽やかな口調で男はしゃべる。
「随分お疲れのご様子ですね。荷物重かったですもんね」
「はい、あの、本当にタダで大丈夫なんですか?」
「もちろんですよ。ボランティアでタクシーやってるんです」
男は爽やかに答えた。
自分も少し安心した気分になり、車の揺れで眠気が襲ってきた。
ウトウトとしていると、
「寝てて大丈夫ですよ。近くまできたらお声かけます」
そんな言葉が聞こえたのを最後に、意識を失った。