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白タクドライバー
第1章 帰路
「お客様〜」
そんな掛け声とともに、ハッと我に返った。
「西町三丁目です」
外の様子を見ると、見覚えのある街並みが続いていた。
「あ、次の交差点を左です」
「かしこまりました」
左折して突き当たりを右に行くと自宅だが、少し不安だったので、突き当たりで降ろしてもらおう。
「そこの突き当たりでお願いします」
「かしこまりました」
突き当たりで車が止まる。
「どうもありがとうございました」
礼を言いドアから出ると、運転士の男もドアから出て自分よりも早くトランクを開けた。
荷物を降ろすと、
「お鞄、御自宅までお持ちしますよ」
自分に手渡す気配もなく、キャリーバッグを持っている。
「いえ、あの……」
すぐに鞄を返してほしい気持ちだったが、彼の整然とした佇まいに圧倒され、自宅まで持ってもらう事にした。

靴擦れで傷む足を引きずりながら、マンションの階段を上り、二階の自室前に到着した。
「ここです」
男は荷物を手放した。
「どうもありがとうございました」
「どういたしまして、では」
男は、あっさりと帰った。

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