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最後の女
第3章 看護師、田宮
程なくして、彼女は他の看護師一人を伴い、ストレッチャーを押してきた。
美代子と菜月も顔を出した。
なぜか二人の顔を直視出来なかった。
言葉も出てこなかった。
この若い看護師の手によって、恥ずかしくも射精してしまったのだ。
彼女の前で、家族に何か気の効いたことを話したとしても、あざ笑われそうで嫌だったのだ。
何かの点滴薬が腕に刺された。
「じゃ、ここに乗ってください」
誠一は自らストレッチャーに横になった。
病室を出た。
傍らに美代子と菜月が歩きながら付き添う。
誠一は流れる廊下の天井を見つめた。
良子は、最後の女は私であって欲しいと、言った。
しかし、最後に自分を射精させたのは、美代子でもなく、良子でもなく……田宮という看護師になった。
ストレッチャーが大きな扉のエレベーターの前で止まった。
田宮がボタンを押す。
扉が開き、天井の風景が変わった。
わずかに顔を持ち上げ、扉の方を見た。
美代子と菜月が心配そうな顔をして立っている。
その二人の後方の壁際に、良子の姿が見えた。
良子も心配そうな顔で佇んでいた。
良子が小さく手を振る。
誠一は頭を戻した。
扉が閉まる。
脇に立って、扉の方をまっすぐ見つめる彼女の胸の名札を見た。
下の名前は何と言うのだろう?
そのとき彼女が左手の甲を、自分の鼻の前に持っていった。
すーすーと、何度か鼻から息を吸う音が聞こえる。
彼女は少し顔をしかめた。
誠一は、最後の女の名前を知りたかったが、やはり口は動かなかった。
完。
美代子と菜月も顔を出した。
なぜか二人の顔を直視出来なかった。
言葉も出てこなかった。
この若い看護師の手によって、恥ずかしくも射精してしまったのだ。
彼女の前で、家族に何か気の効いたことを話したとしても、あざ笑われそうで嫌だったのだ。
何かの点滴薬が腕に刺された。
「じゃ、ここに乗ってください」
誠一は自らストレッチャーに横になった。
病室を出た。
傍らに美代子と菜月が歩きながら付き添う。
誠一は流れる廊下の天井を見つめた。
良子は、最後の女は私であって欲しいと、言った。
しかし、最後に自分を射精させたのは、美代子でもなく、良子でもなく……田宮という看護師になった。
ストレッチャーが大きな扉のエレベーターの前で止まった。
田宮がボタンを押す。
扉が開き、天井の風景が変わった。
わずかに顔を持ち上げ、扉の方を見た。
美代子と菜月が心配そうな顔をして立っている。
その二人の後方の壁際に、良子の姿が見えた。
良子も心配そうな顔で佇んでいた。
良子が小さく手を振る。
誠一は頭を戻した。
扉が閉まる。
脇に立って、扉の方をまっすぐ見つめる彼女の胸の名札を見た。
下の名前は何と言うのだろう?
そのとき彼女が左手の甲を、自分の鼻の前に持っていった。
すーすーと、何度か鼻から息を吸う音が聞こえる。
彼女は少し顔をしかめた。
誠一は、最後の女の名前を知りたかったが、やはり口は動かなかった。
完。