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最後の女
第1章 良子
病室は4人の相部屋だ。
各ベッドは、天井から吊るされたカーテンで仕切られるようになっていた。
誠一は出入り口に近い方のベッドだった。
誠一はカーテンをぐるりと回して、足元だけを開けている。
足の向こうに見える人は、カーテンを全開にしてテレビを観ていた。
ドラマの音声がここまで届いている。
携帯電話に手を伸ばそうとしたときだった、担当の看護師が入ってきた。
「葛西さん。お熱計りますね」
入院したときから毎日担当している看護師だった。
胸の名札には『田宮』と書いてある。
20代後半に見えた。
デジタル体温計が渡された。
若く見えたが、躊躇なくてきぱきと処置をし、自分の仕事に対する自信が窺われた。
しかし、その分余計な会話がなく、少し冷たい感じを受ける。
身体の線が細く、顔も細面だが目が大きく、薄い唇の端が尖って見えるのが尚更、つんとした印象を誠一に与えた。
髪は巻き上げ、清潔そうな綺麗なうなじが見えていた。
「今日の具合はどうですか?」
「いや、特に変わったところはないです。普通です」
「そうですか」
彼女は腕時計を見た。
「今日は午後1時半からの手術の予定です。ごめんなさいね。今日は朝もお昼も食事できなくて……」
そう言いながら、誠一の右手首の内側に、人差し指と中指を揃えて少し力を入れた。
脈を計っている。
冷たい指先だった。
「わかっています。大丈夫です」
敏弘は、そんなことは大したことないような口調で答えた。
彼女は唇の端を少し持ち上げ微笑んだが、すぐさま唇は元に戻った。
わずかに顔を近づけ、誠一の瞳を覗き込む。
大きな瞳だった。
そのときだった、足元のカーテンの隙間から顔を覗かせる者がいた。
「良子!」
各ベッドは、天井から吊るされたカーテンで仕切られるようになっていた。
誠一は出入り口に近い方のベッドだった。
誠一はカーテンをぐるりと回して、足元だけを開けている。
足の向こうに見える人は、カーテンを全開にしてテレビを観ていた。
ドラマの音声がここまで届いている。
携帯電話に手を伸ばそうとしたときだった、担当の看護師が入ってきた。
「葛西さん。お熱計りますね」
入院したときから毎日担当している看護師だった。
胸の名札には『田宮』と書いてある。
20代後半に見えた。
デジタル体温計が渡された。
若く見えたが、躊躇なくてきぱきと処置をし、自分の仕事に対する自信が窺われた。
しかし、その分余計な会話がなく、少し冷たい感じを受ける。
身体の線が細く、顔も細面だが目が大きく、薄い唇の端が尖って見えるのが尚更、つんとした印象を誠一に与えた。
髪は巻き上げ、清潔そうな綺麗なうなじが見えていた。
「今日の具合はどうですか?」
「いや、特に変わったところはないです。普通です」
「そうですか」
彼女は腕時計を見た。
「今日は午後1時半からの手術の予定です。ごめんなさいね。今日は朝もお昼も食事できなくて……」
そう言いながら、誠一の右手首の内側に、人差し指と中指を揃えて少し力を入れた。
脈を計っている。
冷たい指先だった。
「わかっています。大丈夫です」
敏弘は、そんなことは大したことないような口調で答えた。
彼女は唇の端を少し持ち上げ微笑んだが、すぐさま唇は元に戻った。
わずかに顔を近づけ、誠一の瞳を覗き込む。
大きな瞳だった。
そのときだった、足元のカーテンの隙間から顔を覗かせる者がいた。
「良子!」