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最後の女
第1章 良子
そのときだった。
「葛西さん」
カーテンの向こうから声がした。
看護師の声だった。
「先生が来ました。いいですか?」
良子はペニスから手と口を離すと立ち上がった。
誠一はすぐさま掛け布団を腰の辺りまで引き寄せた。
「あ、はい、どうぞ」
カーテンが開いた。
良子は唇を手の甲で拭った。
看護師がちらと、良子の動作に目をやるのが見えた。
「じゃ、がんばってね……またあとで……」
良子はそう言って、看護師の脇をすり抜けて、カーテンの外に消えて行った。
布団の中は“そのまま”だった。
誠一は上の空で医師の話を聞いた。
早くブリーフとパジャマを履きたかったが、ここで履く動作をするわけにはいかなかった。
良子は去り、ペニスはしぼんだが、良子によってもたらされた行き場のなくなった鈍痛は居座り続けた。
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