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続・独占欲に捕らわれて
第5章 策士愛に溺れる
椅子の座り心地のよさと薄暗さで眠くなって来た頃、ブザーが鳴り、満天の星空が広がる。柔らかな女性ナレーターの声が語るのは、オリオン座とさそり座の物語。ポセイドンの息子であるオリオンは優れた狩人としてその名を馳せ、月の女神アルテミスと恋に落ちる。オリオンは自分の腕前に慢心し、横暴を極めた。
そんな彼に立腹した女神ヘラは、1匹の大サソリを地上に遣わす。さすがのオリオンもサソリの猛毒にはかなわず、息絶えてしまう。大サソリはその功績を讃えられ、星座にされた。オリオンの死を悼んだアルテミスが彼を天に昇らせて星座にしたが、星座になっても大サソリが怖く、さそり座が出ている時期は地平線の下に逃げ隠れているという話だ。

上映が終わると、ふたりは起き上がって伸びをする。
「大丈夫? 怖くなかった?」
紅玲は気遣わしげに千聖の顔をのぞき込む。
「あなたが手を握ってくれてたから平気よ。むしろ面白いくらいだわ」
千聖は無邪気に笑った。

「それならよかった。じゃあまた来ようか」
「えぇ、そうね。また来たいわ」
満足したふたりは、肩を並べてプラネタリウムを後にした。

ふたりは帰宅すると、キャリーケースを引っ張り出して荷物を詰め始める。
「本当はもっと前もってやるべきだったんだろうね」
「まぁいいんじゃない? 出発は明日の午後だし、午前中に最終確認できるんだから」
苦笑する紅玲に、千聖はのんびりした口調で答えた。

「なんかチサちゃん変わったよね。付き合う前よりおおらかになった気がする」
「そうかしら?」
「そうだよ。前だったら1週間前にはリスト作って、2、3日前から荷造り始めてもおかしくなかったよ」
紅玲に言われてなんとなく納得する。

「確かにそうかもしれないわね。会社も辞めたし、紅玲と一緒にいられて充実してるから、心の余裕が出来たもの。それに、完璧主義者でなくなってきてる気がするわ」
「それはいいことだね」
「あなたのおかげよ」
千聖が笑顔を向けると、紅玲は口元に弧を描く。
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