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続・独占欲に捕らわれて
第5章 策士愛に溺れる
「青髭を読んで、同じことをして寂しい思いをさせた上で、私が書斎に入るのを待った。私が思うに、あの部屋のどこかにもカメラが隠してあって、あなたはそれを証拠に弱った私を言いくるめて、仕事を辞めさせようとしたんじゃないかしら? 結局寂しすぎてこうして帰ってきた。違う?」
「さすがチサちゃん。よく分かってるねぇ」
紅玲は切った食材を鍋に流し込むと、拍手をする。

「でも、分からないこともあるの」
「それは、なにかな?」
紅玲は自分の緑茶を淹れると、千聖の向かいの席に座った。
「どうして斗真の口止めをしなかったの? あなたらしくないミスよ?」
「トーマの家も職場も、チサちゃんの職場から離れてるし、通勤ルートも被らないから大丈夫だって思ってたんだよねぇ。なにより口裏合わせようとしたら、トーマ怒るだろうし」
緑茶をひと口飲むと、紅玲はうんざりしたようにため息をつく。

「どうして斗真が怒るのよ?」
「そういうの、あんまり好きじゃないからね……。マダムキラーやってるくせに、変なところで真面目っていうかさ」
「あぁ、確かに真面目そうね」
納得した千聖は大きく頷く。

「ねぇ、オレからも聞いていい?」
「何かしら?」
いつになく真剣な目付きの紅玲に、千聖は背筋を伸ばした。
「今日は平日なのに、どうして午前中から家にいたの?」
その質問を密かに待っていた千聖は、得意げな顔をする。

「辞めてきたのよ」
「えぇっ!? あの仕事大好き人間のチサちゃんが!?」
紅玲は珍しく大声を上げ、目を見開く。
(思ったよりいい反応ね)
滅多に見られない紅玲の反応に、千聖はにんまり笑う。

「だって、一昨日の電話で紅玲がものすごく寂しそうにしてたじゃない? それでなんとなく、取材旅行の本当の理由が分かった気がしたの」
「恐れ入るよ……。さて、そろそろかな?」
紅玲は立ち上がると、調理を再開する。何度か味見をしながら調味料を足すと、スープ皿を2枚出して野菜スープをよそる。
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