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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第6章 第二話【春の日】其の弐
松風は遠い眼を虚ろに彷徨わせる。
そのまなざしは、はるかな昔を見つめているようでもあった。花魁は夢見るような眼(まなこ)で昔語りを始める。
お逸は、その話にじっと聞き入った。
松風の恋人は信八といい、当時、二十六になっていた。松風はその頃、まだ初音と呼ばれており、振袖新造になって二年めであった。
初音がまだ禿であった時分から信八とは親しく、信八はよく初音や他の禿にも菓子を買ってきてくれた。そのときはまだ、信八は初音にとって優しい兄のような存在であったにすぎない。
そのまなざしは、はるかな昔を見つめているようでもあった。花魁は夢見るような眼(まなこ)で昔語りを始める。
お逸は、その話にじっと聞き入った。
松風の恋人は信八といい、当時、二十六になっていた。松風はその頃、まだ初音と呼ばれており、振袖新造になって二年めであった。
初音がまだ禿であった時分から信八とは親しく、信八はよく初音や他の禿にも菓子を買ってきてくれた。そのときはまだ、信八は初音にとって優しい兄のような存在であったにすぎない。