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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第6章 第二話【春の日】其の弐
ところが、いつの時代にも廓遊びの心得を知らぬ無粋者がいるわけで、いつものように緋桜花魁の傍に控えていた初音を客が見初めた。通常、花魁ともなれば初会の客とは床を共にしない。何度か通ってきて誠意のあるところを客が見せ、花魁とも顔なじみになってから、晴れて床入りとなるのが手順であった。
その日の客は緋桜にとっては初めてであり、日本橋の生糸問屋の隠居だったという。もう六十を過ぎた爺さんで、その割には脂ぎった膚が初音には随分と気持ち悪いもののように見えた。
その日の客は緋桜にとっては初めてであり、日本橋の生糸問屋の隠居だったという。もう六十を過ぎた爺さんで、その割には脂ぎった膚が初音には随分と気持ち悪いもののように見えた。