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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第2章 第一話【天つみ空に】 其の弐

紅葉は今が盛りで、葉も十分に残っている。艶やかに色づいた葉の影が水面に映じ、それもまた布を飾る模様のようにも見え、興趣を添えている。赤子の手のような葉が重なり合った向こうには、深い湖を思わせる秋の蒼空が見渡せた。やわらかな陽差しの中で、紅く染め上がった葉がかすかに揺れている。
お逸は、その穏やかで美しい眺めに見惚(みと)れ、溜息をついた。こうしていると、父を喪ったことも、伊勢屋に引き取られたこともすべてが現のこととも思えない。何か長い夢を見ている最中なのだとも思えてくる。
お逸は、その穏やかで美しい眺めに見惚(みと)れ、溜息をついた。こうしていると、父を喪ったことも、伊勢屋に引き取られたこともすべてが現のこととも思えない。何か長い夢を見ている最中なのだとも思えてくる。

