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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第2章 第一話【天つみ空に】 其の弐

またしても父の笑顔が眼裏に甦り、お逸は溢れそうになった涙をこらえた。たとえ清五郎がどんなに良くしてくれても、お逸は、父が生きていたあの頃に帰りたかった。
―おとっつぁん、どうして、私を置いて一人でおっかさんのところに逝っちまったの? どうして、私を一人ぼっちにしてしまったの。
心の中で、亡き父に呼びかけてみる。
だが、応えてくれる声はない。
ふと空が翳り、お逸は現実に引き戻された。空は蒼く、雲らしい雲は見当たらないが、はるか彼方に刷毛で描いたようなひとすじの白雲がたなびいている。どうやら、陽はその雲に遮られているようであった。
―おとっつぁん、どうして、私を置いて一人でおっかさんのところに逝っちまったの? どうして、私を一人ぼっちにしてしまったの。
心の中で、亡き父に呼びかけてみる。
だが、応えてくれる声はない。
ふと空が翳り、お逸は現実に引き戻された。空は蒼く、雲らしい雲は見当たらないが、はるか彼方に刷毛で描いたようなひとすじの白雲がたなびいている。どうやら、陽はその雲に遮られているようであった。

