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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第2章 第一話【天つみ空に】 其の弐

お逸は、いつしか筆を止め、茫漠とした視線を庭に投げていた。今のお逸の眼には紅葉が映じてはいても、ただ映しているだけだ。心は全く別のことに囚われていた。
―私は、どうしてあの男(ひと)に恋の歌について話たりしたのだろう。
昨日からずっと繰り返し考えてきたことだけれど、応えはいまだに見つからない。
小さな吐息を吐き出した時、我知らず、口ずさんでいた。
「ひさかたの天つみ空に照る月の失せむ日にこそ我が恋止まぬ」
―私は、どうしてあの男(ひと)に恋の歌について話たりしたのだろう。
昨日からずっと繰り返し考えてきたことだけれど、応えはいまだに見つからない。
小さな吐息を吐き出した時、我知らず、口ずさんでいた。
「ひさかたの天つみ空に照る月の失せむ日にこそ我が恋止まぬ」

