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夜明けまでのセレナーデ
第5章 裏窓〜禁じられた恋の唄〜
…八雲が来ないと分かっている時間は、恐ろしく長く感じる…。

瑞葉はふっと読みかけのシェリーの詩集を膝に落としてため息をつく。
いつも日中は塔の部屋に遊びに来てくれるカイザーも、今日は薫とともに自宅に帰宅していないから尚更だ。

紳一郎は講義と寄宿舎の舎監の仕事に忙しい。
食事を運んで来てくれる以外は貌を出してくれない。

…こうして、一人礼拝堂の塔の中に身を潜めていると…自分が世界の果てに置き去りになっているような気がする…。

不意に例えようもない孤独に襲われ、瑞葉は立ち上がった。

…ほんの少しでいい…。外の空気が吸いたい…。
ううん。外の景色を眺めるだけでいい。
…ほんの少し…ほんの少しでいいから…。
…しかし、部屋には灯り取りの小さな窓が天井に近い場所にあるだけだ。

瑞葉はカシミヤのストールを頭から被ると、入り口とは逆…部屋の片隅にある小さな隠し扉の出口からそっと外に出た。


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