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夜明けまでのセレナーデ
第5章 裏窓〜禁じられた恋の唄〜
…その後、速水が篠宮伯爵家を訪れて分かったことがあった。
八雲は、千賀子の実家の両親と交渉して、瑞葉名義の莫大な不動産と預貯金を確保していた。
また、薫子をも説き伏せて、篠宮家の財産権を僅かだが認めさせていた。
薫子は豪奢な客間で、速水にお茶を勧めながら、その遠い異国の血を感じさせる彫りの深い眼差しを遠くに遊ばせて、呟いた。
「…あの男は、最後まで謎だったわ。
恐ろしく美しいけれど、心の内は何ひとつ明かさなかった」
…けれど…
猛禽類のように険しい瞳に幽かに慈愛の色を浮かべ、速水を見た。
「…あの男の瑞葉への愛情は、本物でしたわ」
意外すぎるその言葉に、速水は眉を寄せた。
この滅びゆく日本の貴族社会の女帝とも恐れられた薫子は、片頰で愉しげに微笑んだ。
「…嘘偽りの愛ばかり見てきたわたくしには、それが分かるのですよ」
八雲は、千賀子の実家の両親と交渉して、瑞葉名義の莫大な不動産と預貯金を確保していた。
また、薫子をも説き伏せて、篠宮家の財産権を僅かだが認めさせていた。
薫子は豪奢な客間で、速水にお茶を勧めながら、その遠い異国の血を感じさせる彫りの深い眼差しを遠くに遊ばせて、呟いた。
「…あの男は、最後まで謎だったわ。
恐ろしく美しいけれど、心の内は何ひとつ明かさなかった」
…けれど…
猛禽類のように険しい瞳に幽かに慈愛の色を浮かべ、速水を見た。
「…あの男の瑞葉への愛情は、本物でしたわ」
意外すぎるその言葉に、速水は眉を寄せた。
この滅びゆく日本の貴族社会の女帝とも恐れられた薫子は、片頰で愉しげに微笑んだ。
「…嘘偽りの愛ばかり見てきたわたくしには、それが分かるのですよ」