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夜明けまでのセレナーデ
第5章 裏窓〜禁じられた恋の唄〜
病室のベッドで、それらすべてを速水から聞かされた瑞葉は、もう取り乱すことはなかった。

「…そう…」
静かに頷き、窓の外に眼を遣った。
…美しい湖水にも似たエメラルドの瞳が、きらきらと輝く一面の雪景色を見つめる。
蜂蜜色の美しい長い髪が窓から射し込む光に照らされ、天使のように煌めく。

あの永遠に降り止まないかと思われていた雪は、呆気なく止んでいた。

瑞葉はもう涙は流さなかった。
…美しくも儚げな…それ故にぞくりとするほどに艶めいたその横貌からは、何ひとつ読み取ることができなかった。

速水は堪らずに、その白い手を強く握り締めた。

「一緒に暮らしましょう。
貴方をもう離したくはないのです。
…愛しています。瑞葉さん」

瑞葉はゆっくりと速水を見上げた。
そうして何かを言いかけたが…ふと、我に返ったように小さく首を振り…微かに頷いた。



…その数ヶ月後、日本は敗戦とともに終戦の時を迎えることになる。

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