この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夜明けまでのセレナーデ
第6章 Le Fantôme de l'Opéra
…ホワイエは、嘘のように静まり返っていた。

煌びやかな七トンものシャンデリアは、シャガールの絵が描かれた天井から吊り下げられ、柔らかな灯りを灯していた。

正面の大階段は無人で、美しい緋色の絨毯が花道のように伸びていた。

…それにしても、ひとが一人もいないなんて…。

不気味な感覚に襲われ、瑞葉は背中を震わせる。
本能的な恐怖から、ホワイエを出ようと踵を返した。

…その刹那…。

大階段の頂上から、端正な靴音が聞こえてきた。

瑞葉は凍りついたように脚を止めた。

…あの…靴音…。

身体が金縛りにあったかのように、動けない。

靴音は次第に近づいてくる。

…まさか…
そんな…馬鹿な…。

…夢だ…自分は今、夢を見ているのだ。
自分に言い聞かせ、きつく眼を閉じる。

靴音は、最後の階段を降り始める。

…あの靴音…
忘れる筈がない…
忘れられる筈がない…

…聞き覚えのある靴音は、やがて瑞葉の背後で静かに止まった。

…振り向いてはならない。
振り向いては…

「…瑞葉様…」
…幻聴のような…美しい忘れがたい声が、瑞葉の鼓膜を震わせる。

…振り向いては、だめだ…だめだ…。
振り向いたら…

意思とは無関係に、何かに操られているかのように身体が動く。

振り向いたその先に佇む男の端麗な美貌が、エメラルドの瞳に幻燈のように映し出される。

…冷涼とした瑠璃色の瞳が、幽かに微笑んだ。

…あの日の言葉の続きが、その唇から零れ落ちる。

…「…私は、貴方を…」

…愛しております…
…誰よりも…




「…八雲…!」

…震える薔薇色の唇が、永遠の恋人を呼ぶように叫び、その白い手が男へと差し伸べられた…。




/322ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ