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夜明けまでのセレナーデ
第8章 新たなる運命
「奥様。お出迎えも致しませんで、申し訳ありませんでした。
電報をくだされば、東京駅まで迎えにまいりましたのに…」
居間のテーブルに恐縮したように茶器を並べる泉に、光は優しく笑いかけた。
「いいのよ、泉。
驚かせようと思って来たのだから」
「しかし奥様…。
東京駅からはどのように?
まだタクシーも走ってはおりませんでしょう…?」
敗戦後間もない東京駅は、混乱の坩堝だ。
タクシーやハイヤーなどあるはずがない。
引き揚げ者や闇米などの買い出しの人々が雑多に列をなし、列車に乗ることも困難なのだ。
…ふふ…と楽しげに光は笑った。
「ヒッチハイクしてきたわ」
「ヒッチハイク⁈母様が⁈」
薫は思わず素っ頓狂な声を上げた。
電報をくだされば、東京駅まで迎えにまいりましたのに…」
居間のテーブルに恐縮したように茶器を並べる泉に、光は優しく笑いかけた。
「いいのよ、泉。
驚かせようと思って来たのだから」
「しかし奥様…。
東京駅からはどのように?
まだタクシーも走ってはおりませんでしょう…?」
敗戦後間もない東京駅は、混乱の坩堝だ。
タクシーやハイヤーなどあるはずがない。
引き揚げ者や闇米などの買い出しの人々が雑多に列をなし、列車に乗ることも困難なのだ。
…ふふ…と楽しげに光は笑った。
「ヒッチハイクしてきたわ」
「ヒッチハイク⁈母様が⁈」
薫は思わず素っ頓狂な声を上げた。