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夜明けまでのセレナーデ
第8章 新たなる運命
溺愛している娘のことを尋ねられ、光は相好を崩す。
「菫ね。元気よ。
すっかり軽井沢に馴染んで、楽しそうに地元の小学校に通っているわ。
…でも「母ちゃん、おやつはまだだか?」とか言い出してしまって…地元に馴染みすぎて少し困っているけれどね」

流石の薫も吹き出した。
「まあ、元気なら何よりですよ。
菫は引っ込み思案だし、身体もあまり丈夫じゃなかったから良かったです…」
今年六歳になった菫は年の離れた妹である。
貌立ちは光の美貌を受け継ぎ、幼い頃から社交界で評判になるほどの大変な美少女だ。
気の早い縁談も舞い込むほどで、礼也を苦笑いさせていた。

薫が生まれたのち、なかなか第二子に恵まれなかった夫婦にとって待望の女の子ということで、光はことさら菫を可愛がっている。
気管支喘息の持病もあり、発作を起こす度に光はナースやナニーに任せることなく寝ずに看病をしていた。

…菫と薫は年も離れているし、その溺愛ぶりに本気で僻むことはなかったが、叱られる度に面白くない気持ちになっていたことは確かだ。
「どうせ僕は母様の子どもじゃないからでしょう?
大方、橋の下から拾ってきた子どもなんでしょう?
だから僕が可愛くないんだ」
と毒づき、光に更に激怒され子ども部屋に閉じ込められる…という悪循環も過去にはあった。

…そんな時、礼也は必ず薫を慰めてくれた。
「お母様がお前を可愛くない訳がないだろう?
お母様は薫も菫も等しく愛していらっしゃるのだよ。
薫は長男だから、どうしても厳しく仰るだけだ。
…それに…」
礼也は苦笑気味に笑い、薫を抱きしめた。
「…お前と光さんは性格が双子みたいによく似ているからな…。
近親なんとやら…だろうな…」

…けれどその後、薫の思春期に二人の距離が近づく事件があり、最悪の関係性からは脱出した。
今では薫も大人になったし、面と向かって光に刃向かうことも少なくなった。
光と菫が軽井沢に疎開してからは、手紙だけの行き来だったので、平和な時間が流れていたのだ。

…母様は遠きにありて思うものだな…。
薫はしみじみと噛み締めていたのだ。









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