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夜明けまでのセレナーデ
第8章 新たなる運命
「…そのような宮様がおられたのですか」
泉は驚いたように呟いた。

「…まあ、よくある話だろう。
権力者や金持ちが妻以外の女に手をつけ、子どもを産ませる…。
昔から欠伸が出るほどよく聞いたよ。
陛下も例外ではなかった…というだけさ」
肩を竦める薫を、光はちらりと見上げ誇らしげに言い放った。
「礼也さんは違うわ。
礼也さんは私だけをずっと愛して大切にしてくださるわ」
それに関しては、薫も疑う余地はない。
わざと仰々しく、胸に手を当て光にお辞儀をしてみせる。
「…ええ、母様。
父様は母様以外の女性など見向きもされないでしょうね。
母様は世界で一番お幸せな奥方様ですよ」
「ありがとう、薫」
嬉しそうに笑う光は、意外なほどに可愛らしい。

…けれど…
それとこれとは話が別だ。

「一体なぜその宮様をうちでお預かりしなくてはならないのですか?」
仏頂面で尋ねる薫に、光はやや芝居掛かった口調で語り始めた。

「…とてもお気の毒なお話なのよ…。
その姫宮様…衣都子様はね、本当は陛下がお手元に引き取られたかったそうなのだけれど、姫宮様のご生母が皇后様付きの奥女中だったことから逆鱗に触れて、ずっと浅草のお寺に預けられていたのですって。
ご生母は産後の肥立ちが悪くて亡くなっていらっしゃるのよ。
そのお寺が空襲で焼失してしまい、お住まいが無くなってしまったそうなの。
…別邸を建てて住まわせようにも、敗戦国になってしまった今、陛下ですら住まいの制限をされ、質素に暮らしていらっしゃるから、とても生活の援助やお世話など儘ならないという訳なの」
「…経緯は何となく分かりましたが、なぜその宮様をうちでお世話をしなくてはならないのですか?」

陛下の宮様を預かるなんて、そんな面倒は真っ平御免だ。
今は暁人の安否が気になって、それどころじゃないと言うのに…。
憮然とする薫に光は悪戯めいた…けれど微かに艶めいた眼差しで微笑った。

「…陛下のお願いは無下には出来ないわ。
軽井沢にお忍びでいらして、私に頭を下げられたのよ?
…貴女を妃に出来なかったのは、私の一生の後悔だ…と仰って」
「…へ?」
…どさくさ紛れに関係ない話をしてないか?

光は澄ました貌で言い放った。
「陛下の宮様をお預かりするなんて、我が家にとって最大の名誉よ。…それから薫」
光は意味深に笑った。
「衣都子様は大変な美人よ」



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