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夜明けまでのセレナーデ
第8章 新たなる運命
「はい。
暁様は、先代の旦那様の愛人のお子として苦労してお育ちになられました。
そんな暁様の窮地を旦那様は救われ、愛情を込めてお育てになったそうです。
…宮様の境遇も暁様と似ていらっしゃるのかもしれません。
そんなお方のお力になれるなら…と」
薫の髪を優しく撫で付けながら、泉は情感を込めて告げた。
にやりと笑い、泉の引き締まった脇腹をつっつく。
「…そんな貌を見せると司さんが嫉妬するよ」
「はい?」
「泉も暁伯父様が好きだったのか…。
伯父様は罪なお方だな」
…今は遠い外国にいるはずの美しく儚げな…夜に咲く花のような伯父の美貌を思い浮かべる。
…月城に、大紋の小父様…
暁伯父様の妖艶な魅力に惹き寄せられ、魅せられたひとは少なくないようだ…。
泉が慌てたように首を振る。
「そ、そんな!好きだなんて、烏滸がましいです。
…少し…憧れただけです…」
「ふうん…」
頬杖を突いて疑わしそうに見上げる薫に表情を引き締め、ガウンを羽織らせる。
「さあ、また湯冷めなさったらお風邪を引きますよ」
「…司さんはどうするの?
母様の話だと、もうこちらに帰りたいみたいじゃない?」
サッシュを結ぶ手を止め、泉は苦しげに精悍な眉を寄せる。
「…司様はまだ軽井沢にいらしたほうが良いのです。
奥様が仰ったように、東京は混沌としていて…あのようにお美しいお方が出歩かれるには危険すぎますから」
薫は吹き出した。
「大胆なのろけだな」
「薫様!私は…」
「いいじゃないか。司さんは本当に綺麗だ。
…泉は…そんな司さんが東京に帰ってくるのが心配で仕方ないんだろう?」
「…薫様…」
困ったように息を吐く泉に、薫は子どもの頃のように抱きつく。
…逞しい胸板…懐かしい泉の匂い…。
清潔な石鹸の匂いと…微かな煙草の匂いだ。
大好きな大好きな、泉の匂いだ。
「…でもね、泉。
ずっと泉に会いたくて我慢している司さんの気持ちも考えてあげなきゃね…」
優しい声で囁いた。
暁様は、先代の旦那様の愛人のお子として苦労してお育ちになられました。
そんな暁様の窮地を旦那様は救われ、愛情を込めてお育てになったそうです。
…宮様の境遇も暁様と似ていらっしゃるのかもしれません。
そんなお方のお力になれるなら…と」
薫の髪を優しく撫で付けながら、泉は情感を込めて告げた。
にやりと笑い、泉の引き締まった脇腹をつっつく。
「…そんな貌を見せると司さんが嫉妬するよ」
「はい?」
「泉も暁伯父様が好きだったのか…。
伯父様は罪なお方だな」
…今は遠い外国にいるはずの美しく儚げな…夜に咲く花のような伯父の美貌を思い浮かべる。
…月城に、大紋の小父様…
暁伯父様の妖艶な魅力に惹き寄せられ、魅せられたひとは少なくないようだ…。
泉が慌てたように首を振る。
「そ、そんな!好きだなんて、烏滸がましいです。
…少し…憧れただけです…」
「ふうん…」
頬杖を突いて疑わしそうに見上げる薫に表情を引き締め、ガウンを羽織らせる。
「さあ、また湯冷めなさったらお風邪を引きますよ」
「…司さんはどうするの?
母様の話だと、もうこちらに帰りたいみたいじゃない?」
サッシュを結ぶ手を止め、泉は苦しげに精悍な眉を寄せる。
「…司様はまだ軽井沢にいらしたほうが良いのです。
奥様が仰ったように、東京は混沌としていて…あのようにお美しいお方が出歩かれるには危険すぎますから」
薫は吹き出した。
「大胆なのろけだな」
「薫様!私は…」
「いいじゃないか。司さんは本当に綺麗だ。
…泉は…そんな司さんが東京に帰ってくるのが心配で仕方ないんだろう?」
「…薫様…」
困ったように息を吐く泉に、薫は子どもの頃のように抱きつく。
…逞しい胸板…懐かしい泉の匂い…。
清潔な石鹸の匂いと…微かな煙草の匂いだ。
大好きな大好きな、泉の匂いだ。
「…でもね、泉。
ずっと泉に会いたくて我慢している司さんの気持ちも考えてあげなきゃね…」
優しい声で囁いた。