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夜明けまでのセレナーデ
第9章 サンドリヨンとワルツを
寺の下男は、やや名残惜し気に…けれど安心したように屋敷を去って行った。

「縣様。どうぞ衣都子様をよろしくお願いいたします。
…衣都子様は本当にお優しい…そしてとてもご不憫なお方なのです」
そう何度も薫に頭を下げ、衣都子と別れを惜しんだ。

男を見送る衣都子に、薫はそっと声を掛けた。
「衣都子様、こちらに」
振り返る衣都子に、笑いかける。
「屋敷をご案内いたします。
…と、その前に…」

「メイリン、来てくれ」
直ぐに梅琳が奥から素早く現れ、一礼する。
「はい。薫様」
「メイリン、今日からこちらでお世話をさせていただく衣都子様だ」
梅琳は衣都子を見上げ、眼を見張った。
…恐らくは、梅琳も衣都子の美貌に驚いたのだろう。
しかし行儀の良い梅琳はすぐさま頭を下げ、膝を折った。

「メイドのメイリンです。
メイリン、衣都子様を母様の衣装部屋にお連れして。
何を使ってもいいから、衣都子様がお似合いになりそうなドレスを合わせてお着替えとお支度の手伝いを頼む」

衣都子が慌てて口を開く。
「そんな…!そんなご迷惑をおかけするわけには…」

薫は陽気に笑った。
「ご心配には及びませんよ。
どうせずっと着ないで眠っていたようなものばかりです。
本人も覚えていないんですから…。
箪笥のなんとやら…ですよ。
母は暫くこちらには帰ってこないのですから、お気になさらず。
…メイリン、お着替えが済んだらお化粧もして差し上げてくれ。
僕は居間で待っているから」

「かしこまりました。
…さあ、衣都子様。こちらへどうぞ…」
梅琳に導かれながら、衣都子はやや困惑気味な表情で薫を見ていたが、やがて美しい瞳を伏せるとしなやかに大階段を上がっていった。

…衣都子が去ったあとには、名前も知らぬ可憐な…さながら野に咲く花のような薫りがした。

「…寺育ちの宮様…か…」
薫はふっと微かに笑って、ホールを横切っていった。
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