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夜明けまでのセレナーデ
第9章 サンドリヨンとワルツを
「薫様、衣都子様のお支度が整いました」
梅琳の声とともに扉が開いた。

「…どうぞ…」
視線を上げた薫は図らずも再び、息を飲む羽目に陥った。

…衣都子は、真珠色の襟元と袖口にたっぷりとレースがあしらわれたプリンセス袖の丈の長いシルクタフタのドレスを身に纏っていた。
そのドレスはウエストを菫色のサッシュで締め上げるデザインで、衣都子のほっそりとした腰を美しく強調し、大きめの蝶結びに綺麗なシルエットで背中に流れていた。
長く艶やかな黒髪は、美しく細やかに編み込まれ、真珠細工のバレッタが飾られていた。
露わになった頸は透き通るように白く長く白鳥の如く優美であった。
うっすらと施された化粧により、繊細に整った貌は匂い立つように華やかさが加わっていた。

…こんなに綺麗な女の子は初めて見た…。
薫は素直に感心した。

「メイリン、ありがとう。母様のコレクションから衣都子様にお似合いなのを探し出せたね。
髪型もお化粧もとても綺麗だ」
「恐れ入ります」
嬉しそうに礼を述べると、膝を折り、梅琳は部屋を後にした。

まだ表情が硬い衣都子を、ソファにいざなう。
「さあ、どうぞこちらに。
お茶にしましょう。
スコーンはお好きですか?」
笑みを浮かべた薫を、衣都子は眩しそうに見上げ、恥ずかしそうに小声で答えた。

「…すみません…。
…いただいたこと、ありません…」
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