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夜明けまでのセレナーデ
第9章 サンドリヨンとワルツを
「…まあ、絹様…!
絹様はどのドレスが良くお似合いになりますね…!」
姿見の前に立つ絹のドレス姿を見て、梅琳はうっとりと声を上げた


…薄いラベンダー色の袖はふんわりと膨らんでいて、ウエストは幅の広い菫色のチュールのサッシュで巻かれ、床に広がるような優美なデザインになっている。
これは梅琳によると、縣家の当主夫人・光が娘時代に着ていた家で過ごす際に身に付ける比較的簡素な服だそうで、それを聞いて更に絹は驚いた。

…広々とした光の衣装部屋にある数えきれないドレスの数々は、見たことがないほどに優雅で豪奢できらきらと眩く輝き、眼を見張るものばかりであった。
今まで上流階級に住まう婦人に間近で接したことがない絹にとって、高級なシルクやタフタのドレスなどは、夢の世界や西洋の童話の中だけに存在するものだった。

「…でも、いつまでも光様のお衣装をお借りして良いのかしら?」
遠慮勝ちに尋ねる絹に梅琳は朗らかに頷いた。
「奥様から、ぜひにお使いいただくようにとご連絡がございました。
絹様が着ていただけたら嬉しいと仰っていましたわ」

…それに…
梅琳は我が事のように嬉しそうな笑みで瞬きをした。
「絹様のお披露目の夜会には、陛下が新しいドレスをお送りくださるそうですよ。
楽しみですわね、絹様」



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