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夜明けまでのセレナーデ
第10章 僕の運命のひと
…それからの騒ぎは、思い返すだけで頭が弾けそうになるほど大変なものだった。

舞踏室に薫に伴われた暁人が現れると、まさに幽霊が現れたかのような悲鳴と響めきが湧き起こった。

…ただ一人…暁人の母、絢子だけは息を詰め…声にならない声を上げながら、暁人に駆け寄り、抱きしめた。

「…暁人さん…!やっぱり…やっぱり生きていらしたのね…!」
震える華奢な白い手が暁人を確認するかのように、その貌を必死でなぞる。

「はい。お母様。長い間、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
暁人が声を詰まらせ、その頭を幼な子のように絢子が抱きしめた。
はらはらと涙を零し…しかし以前のように淑やかな中に理性を感じる愛らしい笑顔で微笑んだ。
「いいの…。私は…貴方が必ず生きていらっしゃると信じていたわ…。
ずっと信じていたわ…。
良かった…暁人さん…良かった…」
あとは声を放って号泣するのに大紋が男泣きに涙を滲ませ、暁人を夫人ごと抱きしめた。

「…暁人…。
よく生きて帰ってくれた…。
ありがとう。暁人…」
「お父様…!」

…そのあとは、聖夜の舞踏会が暁人の帰還祝いとなり、宴は夜を徹して行われた。
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