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夜明けまでのセレナーデ
第11章 僕の運命のひと 〜人魚姫と王子のお伽話〜
「エスメラルダ様!お待ちください!」
海岸べりを走るエスメラルダのあとを、ホセが追いかけてくる。
エスメラルダは振り向き様に叫ぶ。
「付いてこないで!」
その弾みに浜辺の隆起した砂地に脚を取られ、エスメラルダの身体はふわりと投げ出された。
「あっ…!」

「大丈夫ですか!?エスメラルダ様!」
蹲るエスメラルダにホセが慌てて駆け寄る。

「…みっともない…」
ぽつりと哀しげに、呟く。
「…え?」
「…みっともなくて醜い私の脚…。
走ることも、満足にできない…」
真珠色のドレスの裾から、ほっそりとした脚が露わになっていた。

「エスメラルダ様の脚は、醜くなんかありません。
エスメラルダ様の脚は、世界で一番美しいです」
朴訥に…けれどきっぱりと答え、ホセは丁寧にドレスの裾を直した。
「…ホセ…」

「…覚えていらっしゃいますか?
エスメラルダ様は孤児だった俺に、いつも優しくしてくださいました。
…字を教えてくれて、本を読んでくださった。
俺はいつもエスメラルダ様だけを見てきました。
エスメラルダ様は、どこもかしこも眩しいくらいに綺麗だ。
…綺麗すぎて、いつも苦しくなります」
最後は、照れたような小さな声だった。

「…ホセ…」
新たに浮かんだ涙は、なぜだかエスメラルダの胸の中に温かく静かに満ちていった。

「…ねえ、ホセ。
私、もっといろんなところに行ってみたい。
もっと世界を知りたい。
…この眼で、広い世界を見てみたい」

…だから…
と、美しいエメラルドの瞳が、ホセを見上げる。

「…一緒に来てくれる?」

ホセは眩しそうに眼を細め、上擦った声で力強く返事をした。
「もちろんです。
俺は、エスメラルダ様のいらっしゃるところならどこでも着いてゆきます。
俺が、エスメラルダ様をお守りします」

エスメラルダはにっこりと笑った。
「…じゃあ、お礼に私が本を読んであげるわ。
毎晩ね。
一番最初は…そうね、人魚姫のお話しね」

…神の恩寵のような静かな潮騒の音が、二人を優しく包み込んだ。



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