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夜明けまでのセレナーデ
第11章 僕の運命のひと 〜人魚姫と王子のお伽話〜
走り去ったエスメラルダを力無く見送り、ビセンテはぽつりと呟いた。
それは、胸が掴まれるように寂しげな声だった。
「…自分の幸せは自分が決める…か…。
レティシアにそっくりになってきたな…」
「…ビセンテ…」
雄大で、計り知れないほどに力強く、しなやかな闘志に満ちた海賊王は、どこかが痛むように…眼を細めた。
「かつてレティシアに、聞いたことがある。
…お前は幸せだったか?と。
俺が…お前から何もかも奪ってしまったから…と」
…そうしたら…
と、切なげな…思わず息を詰めるほどに脆いような表情で、ビセンテは告げた。
「…私の幸せは私が決めるわ…と」
…そう言って、まだ赤ん坊のエスメラルダを抱きながら初めて俺に笑いかけてくれたんだ…。
そうして世界に無比な海賊王は、未だに胸に抱く愛おしいひとの面影を大切に閉じ込めるかのように、大きく無骨な両手で貌を覆ったのだった。
それは、胸が掴まれるように寂しげな声だった。
「…自分の幸せは自分が決める…か…。
レティシアにそっくりになってきたな…」
「…ビセンテ…」
雄大で、計り知れないほどに力強く、しなやかな闘志に満ちた海賊王は、どこかが痛むように…眼を細めた。
「かつてレティシアに、聞いたことがある。
…お前は幸せだったか?と。
俺が…お前から何もかも奪ってしまったから…と」
…そうしたら…
と、切なげな…思わず息を詰めるほどに脆いような表情で、ビセンテは告げた。
「…私の幸せは私が決めるわ…と」
…そう言って、まだ赤ん坊のエスメラルダを抱きながら初めて俺に笑いかけてくれたんだ…。
そうして世界に無比な海賊王は、未だに胸に抱く愛おしいひとの面影を大切に閉じ込めるかのように、大きく無骨な両手で貌を覆ったのだった。