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夜明けまでのセレナーデ
第2章 礼拝堂の夜想曲
…紳一郎さんはあの森番と相思相愛なのではなかったのか?
なぜ、青山さんとキスなんか…!
これは、浮気…浮気なのか?
訳が分からずに憮然とする薫に、青山は好意的な温かな笑みを与えた。
「…どうやら我々は純粋培養のお坊ちゃまを困らせてしまったようだな」
「…我々って…貴方のせいでしょう?」
纏わり付く青山の手を無造作に振り払い、紳一郎は執務机の前に戻る。
さらりとした黒髪を掻き上げ
「薫、気にしなくていいよ。
青山さんは悪戯好きな方なんだ。
…タチの悪い…ね」
生徒台帳に眼を通しながら、事も無げに言い放つ。
「おやおや、ご挨拶だな」
青山は長い脚でゆっくりと紳一郎の前に廻り込むと、その大きな手で紳一郎の形の良い白い顎を摘んだ。
「…君と私と…そして十市くんとの稀有で淫らな…けれど素晴らしい関係性をタチが悪いとは心外だね。
私は何よりも誇らしく思っているのに…」
「薫の前で、やめてください」
青山の手を振り払い、立ち上がる。
「別に僕は貴方との関係を認めた訳じゃない。
…十市が…十市がそうしてくれと、言い残して出征したから…。
…だから…!」
紳一郎は声を詰まらせると、そのまま足早に部屋を出て行った。
「紳一郎さん!」
慌てて追いかけようとする薫の背中に、穏やかな声がかかる。
「一人にさせてあげよう。
…紳一郎くんにはそんな時間も必要なのだよ」
振り返り、薫は眉を顰めて尋ねた。
「…貴方は…いったい何者なんですか?」
「…私は青山史朗だ。
堅苦しいのは苦手なんだ。
史朗と呼んでくれ、薫くん」
青山はアンダルシアの太陽のように明るく笑い、眼くばせをして見せた。
なぜ、青山さんとキスなんか…!
これは、浮気…浮気なのか?
訳が分からずに憮然とする薫に、青山は好意的な温かな笑みを与えた。
「…どうやら我々は純粋培養のお坊ちゃまを困らせてしまったようだな」
「…我々って…貴方のせいでしょう?」
纏わり付く青山の手を無造作に振り払い、紳一郎は執務机の前に戻る。
さらりとした黒髪を掻き上げ
「薫、気にしなくていいよ。
青山さんは悪戯好きな方なんだ。
…タチの悪い…ね」
生徒台帳に眼を通しながら、事も無げに言い放つ。
「おやおや、ご挨拶だな」
青山は長い脚でゆっくりと紳一郎の前に廻り込むと、その大きな手で紳一郎の形の良い白い顎を摘んだ。
「…君と私と…そして十市くんとの稀有で淫らな…けれど素晴らしい関係性をタチが悪いとは心外だね。
私は何よりも誇らしく思っているのに…」
「薫の前で、やめてください」
青山の手を振り払い、立ち上がる。
「別に僕は貴方との関係を認めた訳じゃない。
…十市が…十市がそうしてくれと、言い残して出征したから…。
…だから…!」
紳一郎は声を詰まらせると、そのまま足早に部屋を出て行った。
「紳一郎さん!」
慌てて追いかけようとする薫の背中に、穏やかな声がかかる。
「一人にさせてあげよう。
…紳一郎くんにはそんな時間も必要なのだよ」
振り返り、薫は眉を顰めて尋ねた。
「…貴方は…いったい何者なんですか?」
「…私は青山史朗だ。
堅苦しいのは苦手なんだ。
史朗と呼んでくれ、薫くん」
青山はアンダルシアの太陽のように明るく笑い、眼くばせをして見せた。