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はじめてでドタバタな夜と、その後のこと
第2章 順番としてはキスからだけど、その次は?


 それは紛れもなく、僕のはじめてのキスであるのだけど……。

「うっ……くっ!」

 思いの外、強く押しつけられた唇は、僕の呼吸を完全に不可能にする。もちろん鼻で空気を取り入れることはできるのだけど、それを出す時に鼻息を相手にかけるような真似を自然と恐れた結果、二酸化炭素を排気することすらも叶わなかった。

 すなわち僕のはじめてのキスは、壮絶なる無呼吸状態に陥っていた。

 どちらからともなく、それに耐えかねた挙句――。

「――ぷはっ!」

 頭から被っていた毛布を払いのけて、僕と寺井は新鮮な空気を求めた。

「はあ……はあ……。ううっ……しっ、死ぬかと思った」

 呼吸を整えながら、僕が言うと。

「確かに苦しかったけど……その感想は、なくない?」

 いち早く平静さを取り戻した寺井は、僕の方をじっと睨みつけた。

 確かにはじめてのキスの感想が「死ぬかと思った」では、あんまりかもしれないと思い。

「ご、ごめん」

 素直に頭を下げた僕に、寺井はおどけたようにこう言うのだった。

「本気で謝られても困るけど。私こそごめんなさい。はじめてだから、キスのしかた、よくわからなくって」

「え? はじめて」

「うん、はじめて」

 そう言って微笑んだ寺井にとっても、今のがはじめてだったなんて。それを聞いて、なぜだか胸の奥が高鳴ったように感じた。

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