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戦場に響く鈴の音
第7章 士気



俺が兵士達の気を沈めれば


「申し訳ございません…。」


と俺に寄り添う直愛までもが俺に頭を下げて来る。

つまり直愛も俺の大将としての能力を疑ってたらしい。


「もう良い。鈴を休ませたい。」


いきなり始まった土石流のせいで軍勢はかなり小さいエリアで固まってしまってる。


「すぐに天幕のご用意を…。」

「さっきの老兵を天幕の見張りに付けろ。」

「御意っ!」


天幕に戻されるとわかった鈴が俺の頬を小さな指で抓って来る。


「また留守番か?」

「当然だ。土石流が収まり次第、俺は出る。お前は足手まといにしかならん。」

「わかってる。」


鈴が悲しみの目を俺に向ける。

この目が嫌いだ。

胡蝶と同じ目…。

俺はただ笑って欲しいだけなんだ。


「万里を倒したら、天音に連れてってやる。」

「天音に?」

「その肋骨じゃ、燕まで馬での旅は不可能だからな。」


大した約束じゃない。

なのに鈴が満面の笑みを浮かべる。


「いいのか?本当に天音湖が見れるのか?」


好奇心を丸出しにして鈴がはしゃぐ。

土石流を起こす為に雪南が天音湖に築いた巨大な防壁を見たいと鈴が俺に強請る。

雨季に入れば天音川は勝手に増水する。

その間、天音湖を防壁で堰き止めて湖が決壊するギリギリまで雪南は待ち続けた。

防壁に予め開けてある小さな水門を開ければ決壊寸前の防壁は崩れ土石流となり川下の西元へと流れて来る。

お陰で天音川の川幅は以前よりも広がり、深さも更に深くなる。

2度と由が西元に対し手出しが出来ないようにと雪南は後の事まで考えて天音湖に防壁を築いた。

雪南が作り出した土石流を眺めながら、のんびりと俺は天音で鈴と過ごす時間の事だけを考えていた。


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