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戦場に響く鈴の音
第2章 登城
後始末を配下の武官に任せ、俺は梁間の残党兵の5千と自分が率いた2万5千の兵士のうち、西元よりも遠方に居を構える1万5千を連れて大城主が待つ燕へと向かう。
今の西元城には1万も兵を残せば充分だ。
燕への帰路では鈴を俺の愛馬に同乗させる。
今後、鈴は俺の小姓であると兵達に認識を持たせ余計な手出しをさせない為の予防処置だ。
今回の出兵目的が梁間討伐である以上は梁間の元小姓というだけで鈴に何かと辛く当たる兵士が居てもおかしくはない。
「黒崎様…。」
成り行きだけで拾った鈴を俺の小姓にした事が不満な雪南が恨みがましく俺を睨む。
「そうやって雪南がやってる事は俺の人生を否定してるってわかってんのか?」
嫌味を込めた冗談に真面目な雪南は頬を膨らす。
「御館様が黒崎様を引き取った時は既に25だったと自分は聞いております。黒崎様はまだ15…、小姓を持つ年齢には余りにもお早いのではないかと思う次第であります。」
雪南が余計な事を言うから直愛と鈴が驚いた表情で同時に俺の顔を見る。
「何だ?」
先ずは直愛を牽制する。
「15…、であらせられますか?」
直愛はストレートに驚きを表わす。
「3ヶ月前に元服したばかりからな。今回の梁間討伐は俺の初陣だとは言わなかったか?」
通常は15を成人と見なし元服する。
俺の場合、御館様に拾われた年齢が不確かな為に本当に15なのかも怪しい話だと思う。
「てっきり、自分よりも目上かと…、その…、黒崎様は余りにも落ち着いておられる。」
「それは老けてると言いたいのか?」
「いえっ…、そのような意味では…。」
「御館様は俺が15よりももっと若い可能性があると仰っていた。ただ俺の場合はずっと御館様と共に居たお陰で普通の15とは違い、戦場での経験値がかなり高い方だと思う。」
「それはそれは、流石、名将と名高い大河様で在られられる。」
微妙な表情で直愛が世辞を述べる。