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戦場に響く鈴の音
第11章 報告



そんな勝手な条件を蘇が認めるはずもなく、蘇の講和条約のまとめ役に宰相宇喜多が蘇としての条件を由に突き付けた。

蘇が出した条件は、今後、西元は蘇の領地であり、何人たりとて由からの侵略は認めないという事だ。

西元を蘇国の物とする決定は先の由の城主である李を撃ち落とした段階で神国に申し出は出されており、西元は蘇の物だと天帝が認めているという主張に対し由は現在、天帝の決定に不服申立て中だとの回答があった。

この様に互いの意見に相違があれば、双方は天帝からの決定に従う掟になっている。


「天帝の決定が?」


御館様に確認する。


「ああ、笹川には娘がいる。それを蘇の西方が領主に差し出し、蘇の領主が西元を治めるとするとの決定が下された。」


御館様がゆっくりと語る言葉を吟味する。

蘇の西方が領主とは義父の事…。

そこへ万里の娘を差し出す。

それは由に人質を差し出せという意味の決定だ。

そんな条件を由として笹川家が認めるとは思えない。

訝しむ俺を御館様が笑う。


「天帝の決定とは、今後につき、由は笹川の娘、そして蘇の西方が領主の嫡男との間に嫡子が生まれた場合、西元はその嫡子の物とするという意味だ。」


西方が領主の嫡男とは俺の事…。

そして由の笹川の娘との間に出来た嫡子となれば、由と蘇の両方の領地を治める権利を持つ子となる。


「まさか…。」


俺が青ざめると同時に鈴が菓子を喉に詰まらせる。


「この講和条件は天帝の決定だ。まあ、嫡子が産まれるまでは蘇の領地とするという事で一時的な講和が結ばれた。蘇としては無理に由との間に嫡子を望まぬというのが本音だが、事は外交問題となるが故に形上は西方の次期領主と笹川の娘の婚儀が決定した。」


喉を詰まらせた鈴の背中を叩きながら、表情を変えずに話す御館様の言葉を聞く羽目になる。

俺の婚儀…。

大河の拾われっ子である以上、何らかの政略を含む婚姻は有り得るとは覚悟があったが、こんな形で受ける事になるとは夢にも思ってなかったというのが本音だった。


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