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戦場に響く鈴の音
第11章 報告
「まあ、良い…。鈴の問題については、まだしばらくの猶予がある故、焦る事も無かろうに…。」
意味深な言葉を呟き、御館様が鈴を見る。
「鈴の問題ですか?」
そこに食い下がる俺に向かって御館様は眉を寄せ、嫌そうな表情を浮かべる。
鈴の問題とは?
立場上、これ以上を御館様に根掘り葉掘りと聞く訳にはいかず、俺の頭の中だけで考える。
当の本人は御館様から頂いた菓子を口に頬張り、俺と御館様の2人を見比べるようにしてのんびりと眺めている。
「鈴、御館様の御前で行儀が悪い。」
鈴の口端に付いた菓子の屑を指先で拭ってやる。
「出された物はちゃんと食べろとおっ父から教わった。」
「遠慮という言葉は学ばなかったのか?」
痩せっぽっちの鈴だからこそ、誰もが食べる事しか教えてない。
「良い良い…、鈴はまだまだ育ち盛りだからな。さて、神路…。お前の方こそ幾つになった?」
鈴に甘い御館様が突然、俺の年齢を確認する。
御館様からすれば俺はいつまでもガキらしい。
「直に18になります。」
元服して3年目の漢をいつまでもガキ扱いして欲しくない。
「18…か…。」
懐かしげに俺を見る御館様の視線は変わらずに暖かい。
ただ照れ臭いからと俺の方が御館様より眼を逸らす。
「話は変わるが、神路よ。先の西元制定の条件…、お前はどの程度把握している?」
話が変わり過ぎだろうとは思うが敢えて御館様にツッコミを入れようとは思わない。
「西元制定の条件とは、由と蘇の間で結ばれた例の講和条約の件ですか?」
由の言い分は西元は元々支羅であり、由の領地であると共に由の兵50万を預かる兵士長、笹川家の領地であるという事だ。
笹川がそれを取り戻そうとして俺に撃たれはしたが、由としては今回の戦平定の条件として笹川領地は万里の嫡男、孩里(かいり)が領地を継ぐ為に西元を速やかに返せという話から始まった。