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戦場に響く鈴の音
第14章 護衛
赤毛の豊かな髪は癖があるらしく大きく波打ち、紅を引いた唇は魔女の様に真っ赤な色に染まってる。
ブス…。
とまでは言わないが、派手な着物同様に派手な顔立ちをした彩里は女にしては骨が太く背も高く、まさに万里の生き写しだと言わざるを得ない。
その彩里の大きな口が俺を食いそうなほど大きく開く。
「お前が大河の拾われっ子か?卑しき生まれの者は女子の部屋を訪ねる礼儀も知らぬらしい。」
父親に良く似た嫌味…。
もしも、オッサンが生きてれば、この娘の貰い手を探すのには、さぞかしや苦労したのだろうと思うと自然に笑いが込み上げる。
「姫様っ!」
そう叫びながら彩里の傍に駆け寄ろうとする老婆を咄嗟に雪南が捕まえて引き離す。
「余計な動きをすれば、容赦なく切る。」
淡々とした冷たい声が部屋に響く。
雪南の抜いた刀は、本当に容赦なく老婆の首元に宛てがわれてる。
学だけと思われがちな雪南だが、単に体力が無いというだけで、抜刀に至っては俺よりも速い。
「生まれ卑しき者は、本当に礼儀を知らぬな。」
ハスキーな女の声が怒りに震えている。
「例え、笹川の姫君だとしても、我が主に対する無礼な言葉がまだ続く様なら私は老婆の首を落としますよ。」
雪南の脅しに彩里が豪快な歯ぎしりをする。
これで、大体の状況は見えた。
彩里がどうゆうつもりで黒崎に嫁ぐと決めたのか…。
それを見極める為に行なわれている雪南の猿芝居には付き合ってられない。
俺は俺を待つ仔猫の元へ一刻も早く帰りたい。
「もう、良い…、雪南…。ここから先は俺が彩里と話し合う。そこの老婆や兵士が俺の邪魔をしないように見張ってろ。」
「御意…。」
そう…。
ここからは夫婦の話し合いと行こうじゃないか…。
首の後ろにチリチリとする嫌な痛みを感じる。
ここから先は戦場…。
身分など関係なく俺と彩里の2人だけの戦で、買った方が敗者を従わせる権利を得るだけなのだと、俺に刃の様な視線を向ける彩里に向かっていた。