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戦場に響く鈴の音
第14章 護衛



歳の頃は40を超えているという中年兵士…。

長く仕えた笹川 万里という主を討ち取った張本人を前にして、怒りを治める事が出来ぬ様な兵士を伴ったとなれば、万里の娘も一筋縄で済む姫君ではなさそうだ。

兵士のキツい視線を感じたまま、俺と雪南は奧殿へ進む。


「入るぞ…。」


閉じられた襖を開けば、驚愕する老婆と若い女が悲鳴を上げる。


「何者か?ここは笹川の姫君が御座す奧殿であるぞっ!」


震えながらも嗄れた声を老婆が張り上げる。

老婆の声を聞き付けたと思われる、もう1人の兵士が、さっきの兵士の反対側から直ぐに駆け寄って来る。


「お前が万里のオッサンの娘か?」


2人で抱き合うようにして部屋の隅で震えている若い女達のうち、今にも泣きそうな表情で俺を凝視し続ける女に聞いてみる。


「こちらが先に、何者かと聞いておるっ!」


再び老婆が叫び出す。

雪南は嫌味ったらしく、くっくっと笑いを噛み殺す。

わざと俺を突き放してまで状況を面白がる家臣は雪南くらいだと睨み付ければ、コホンと一つの咳払いをした雪南が


「この屋敷の主、黒崎 神路様だ。今日は婚礼の儀の始まりとして笹川の姫君に挨拶に来た。」


と余裕たっぷりの表情で、わざとらしくゆっくりと俺の存在の説明をする。


「黒崎の…。」


怯える女子2人はともかく、老婆と兵士は明らかな敵意を俺の方へと向けて来る。


「何の騒ぎじゃ?」


ハスキーな女子の声と同時に老婆達が控えてた部屋の奥にある襖戸がスルりと開く。


「お前が…、彩里だな。」


一目で万里の娘だとわかる姫君…。

眼が痛くなるほど派手な着物姿を晒した女…。

血の様に真っ赤な打掛には、金の刺繍で大輪の牡丹の花が配われており、その裾を引き摺る彩里が俺の前へと進み出る。


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