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戦場に響く鈴の音
第1章 謀叛



雪南は軍師として在り来りな意見を述べる。


「西元城は城で在って蘇の砦でございます。」


そんな事は百も承知。


「その為に2万5千という軍勢を御館様が我々に預け出してくれたのだと理解は出来ぬか?」

「それは…。」

「由に対し我が蘇は裏切りに容赦が無いと知らしめる意味を込めて盛大な篝火を灯せ…。」


由への見せしめに裏切った城主が居る砦など蘇には無用なのだと見せ付ける。

砦が無くとも蘇への侵略は容易くは無いと思い知らせるだけの2万5千という軍勢だ。


「大城主様は容赦が無さ過ぎる。」


雪南が苦痛を伴う表情を浮かべながら呟く。

大城主、大河 利潤(りじゅ)。

その名を忌み嫌う者は御館様を漆黒の魔王と罵る。

蘇の国旗が黒を主とする事から幾千もの返り血を浴びても染まらぬ漆黒の大城主は魔王だと嫌味を意味する。

だが俺は知ってる。

御館様だって苦渋の決断を下しただけだ。

家臣の悪行を認めれば後の民の感情に影響する。

全ては蘇の民の為…。

梁間の様な輩を野放しにする事が蘇の国にとり暗黒を生み出す元凶となる。

此度の逆賊討伐に一番、心を痛めてるのは御館様自身に他ならない。


「さっさと終わらせて帰るぞ。」


御館様の元へ…。

こんな茶番をダラダラと続ければ御館様が心を痛めて傷付くだけだ。

俺の命令に従う形で雪南が伝令へ走り回る。

決着が着くまではさほどの時間を必要としない。

一刻もすれば新たな伝令が届き出す。


「西元城が開門されました。」


そりゃ、そうだろう。

籠城の構えから予想外の火が放たれた。

蘇の西の要の砦だからと高を括った梁間の負けだ。

火攻めに合うた武将がその状況から逃げ出すには開城するしか道は無い。


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